独自パッケージを用いない開発がベンダーロックオンを回避する

オフコンでは、メーカーが自社開発したハード用に用意した独自パッケージソフトを使ってシステム開発することがほとんどです。製造業であれ、サービス業であれ、普段のビジネスで行われる商取引は、企業ごとにあまり大きな差異はなく、売上管理や商品管理といったベースとなる共通機能を用意しておくことで、開発工程を大幅に縮小しつつ、データの拡張性、追加の内部処理を行う関数、入力画面や帳票のカスタマイズ方法を提供することで、お客様の多様なニーズを吸収しながら、個々の業務にしっかり対応できるシステムを作ることができました。

オフコン開発者とユーザー企業が長い年月を掛けながら、細部にわたり練り上げられてきたシステムは流石に使い勝手がよく、多くの企業にとって中々手放すことができないシステムとなりました。しかし導入から20年から30年たった今、ハードとソフトの両方で老朽化が進み、オフコン技術者の高齢化や退職に伴い、メーカー自身でさえも継続してサポートしていくことが困難な状況になってきています。

メーカーやシステム業者が独自提供するシステムに顧客が慣れてしまい、別の業者に切り替えることが難しくなってしまう状況を、システム業界では「ベンダーロックオン」と呼んでいます。オフコンを導入した企業では、システム的にも、業務的にも、ベンダーにシステムをがっちり握られてしまい、もはや他の業者や技術を選びにくい状況に陥っています。

それでもオフコンベースのシステムから脱却するには、他の技術でシステムの作り直し(移行、マイグレーションとも言います)を行うことになりますが、顧客にとっても、ベンダーにとっても、システム移行には大きなリスクが伴います。ここでシステム移行の仕方を一歩でも間違えると、オフコンと同じ状況を数十年後にまた繰り返す羽目になります。特に、多くの中堅システムインテグレーターが勧めてくるERP(エンタープライズ・リソース・プランニング。経理、人事、生産、営業など会社で必要な機能を一つの製品パッケージにしたソフト)や、大手ソフトウェア会社が提供する製品を採用すると、後々オフコンの時と変わらない状況に陥ることがありえます。ソフトが最新版に更新される度に、これらのライセンス料を長きにわたって徴収され続けることになりますし、ERPのようなパッケージ製品はベースとなる機能部分に独自性を持つため、カスタマイズをしてもオフコンと同じような使い勝手になるとは限りません。実際ERP導入は、ERPが求めるやり方に業務自体を合わせるほうが成功しやすいと言われています。

しかしながら業務システムをOSSを使って最初から顧客が望むような形で内製してしまえば、こうした独自パッケージだけをサポートする業者へ今後の開発や運用を依存し続ける状況を避けられるようになります。開発の仕方やその発注先においてさえ、多くの選択肢を得られるようになるでしょう。OSSを使ったシステム開発は、住宅に例えると「注文住宅」的な方法を取ります。つまりエンジニアがお客様のニーズを把握した上で最適なシステムを設計し、OSSを開発部品として、お客様にあったシステムをゼロから構築します。OSSを使って開発されていれば、ある会社のエンジニアが仕上げたシステムを別の会社のエンジニアへ開発を引き継ぐことも可能です。